究極の横綱、白鵬

ご覧いただき、ありがとうございます。

リノキア英語スクールの鈴木彰憲です。

今回は、最近読んだ『白鵬伝』という本を紹介したいと思います。

相撲は好きで、場所があるときはテレビで必ず見ています。
2020年5月はコロナウイルスの影響で場所が中止になってしまい、とても残念ではありましたが、その代わりとして、この『白鵬伝』を読むことにしました。

英語という1つのことに人生を懸けている以上、相撲に人生を懸けている横綱白鵬から何かが学べるのではないかと思ったのも理由の1つです。

僕自身は、ずっと英語学習をしている身であり、今では教える立場にもなっていますが、基本的には「学習者」という姿勢を忘れないように心がけています。その姿勢がなければ、生徒さんに説得力のあるアドバイスができないと考えているからです。

これまで英語学習をしてきて、TOEIC満点や英検1級、全国通訳案内士などの資格を取ってきましたが、いつも順風満帆で進歩してきたわけではありません。

やる気が起きないとき、日々同じことの繰り返しで目標を見失ってしまったとき、つい楽なほうに流されてしまったとき……思い返せばそんなことの連続でしたし、今でも「ダメになりそうな自分」と向き合いながら、どうにかして前に進もうと努力する日々を送っています。

今の僕にとって、英語は人生そのものです。
英語を使う者として、英語を学ぶ者として、もっと成長していきたいと思っています。
『白鵬伝』には、英語学習にそのまま活かせるヒントがたくさんありましたので、それを可能な限りでシェアしてみたいと思います。

ところどころ引用もしていきますので、『白鵬伝』を手に取るきっかけとなれば幸いです。

1.犠牲あっての達成

「犠牲」と書いてしまうと悪いことを想像してしまうかもしれませんが、時には何かを犠牲にしなければならない場合もあります。その1つが、「何かを達成したいとき」でしょう。

きっと多くの方が経験されていることだと思います。
「試験に合格したくて、遊ぶのを我慢した」
「翌日の仕事のことを考えて、夜にスマホを触らないようにした」
「痩せるために、食べたいものを食べなかった」
目標の大きさに違いはあれど、達成したいことのために自分を律するというのは一般的に行われることでしょう。

白鵬も、2007年に横綱に昇進してからは、場所中は「禁酒」をルールにしているそうです。眠れない夜があっても、負けて悔しい思いをしても、いっさい飲まない。

ちっちゃいことかもしれないけど、そのちっちゃいことの積み重ねが大事なんじゃないかな。だから、『何かを犠牲にしないとダメなんだ』。そういうことなんですよね。闘うって、そういうことじゃないですか。人と人の闘いだけではなく、いろんな意味での闘いっていうのは……

白鵬がなぜ禁酒をしているかというと、精神の緊張を解かないためです。
横綱という地位である以上、負けることは許されません。
勝てなくなった横綱は引退するしかありません。
「勝つか、相撲を辞めるか」のどちらかしか選択肢がないため、お酒を犠牲にしながら、白鵬は「勝つこと」を選んでいるのです。

なにかを犠牲にするというのは、言うほど簡単ではありません。
でも、それをしなければ求める結果は得られない……白鵬の言葉からは、そんな「当たり前のこと」をいかに大事にしているかが窺えます。

あらゆることに敷衍できる事実だと思います。
もちろん英語学習にも同じことが言えます。

ツイッターで、こんなつぶやきを見たことがあります。

英語を学びたいと思っている人、10,000人。
英語を始める人、100人。
英語を続ける人、1人。

ちょっと誇張されているとは思いますが、英語を勉強したいと思っている人よりも、実際に継続できる人のほうが少ないのは明らかです。

「英語をやるか、やらないか」の岐路に立った時、どちらを選ぶかですね。
やらないなら、それで話は終わります。
でも、もし英語をやるほうを選んだとしたら、なにかを犠牲にしなければいけません。
それはネットサーフィンをする時間かもしれませんし、お酒を飲みながらテレビを見る時間かもしれませんし、あるいは大切な人と過ごす時間かもしれませんが、どういう形であっても、英語を勉強する時間のために犠牲を払わなくてはならないのは確かです。

そのように何かを犠牲にしながら頑張ることで、求めていたものが手に入るのでしょう。
大事なことは、いつだってシンプルです。

 

2. 基礎を大切に

白鵬は今でこそダンベルを使った筋トレを稽古メニューに入れていますが、2012年までは筋トレをしていなかったそうです。つまり2001年に初土俵を踏んでから約11年間は、筋トレなしでの稽古をしていたということです。

では日々の稽古で何をしていたのかというと、「四股、鉄砲、すり足、腕立て伏せ」です。
力士の稽古において、もっとも基礎のところです。
その基礎をしっかりやることで番付を上げていき、横綱にまで登り詰めたのです。

※ 鉄砲に馴染みがない方もいらっしゃると思うので、参考動画を張り付けておきました。(鉄砲をやっている力士は、白鵬ではありません)

白鵬は、基礎鍛錬に時間をかける力士として有名です。
でも基礎が好きかというと決してそんなことはありません。

やっぱり、丹念に基本、基礎をしっかりやることなんですね。でも、鍛錬っていうのは、自分の体をいじめるっていうのは、こんなつらい、こんな嫌なことはないけどね。毎日、同じようなことばっかりやるし。当たり前なことだけど、でも、これをやらないと勝てないっていうことは、自分が一番認識してますから

嫌だし面倒なんだけれども、勝つために必要だからやる、という姿勢は「さすが」ですね。
自分も頑張ろうという気持ちにさせてくれます。

基礎が大事なのは、英語学習でも言えることです。
「単語を覚える、文法を理解する、ディクテーション・暗唱・シャドーイングをする」など、基礎となる練習方法はたくさんありますが、どれも時間をかけて取り組まないと身につかない面倒なものです。

とくに英語学習には「忘れる」ことが付き物ですから、時には後退しているかのような不安に駆られることもあります。毎日同じことをやり続け、進歩しているのかどうかもわからない。そんな状態が続くと、基礎練習をするのが嫌になって逃げだしてしまい、楽しい海外ドラマを延々と見て勉強している気分に浸り、自分を安心させたくなることもあるでしょう。

もちろん海外ドラマは立派な英語学習のマテリアルになりますが、ある程度の基礎がないと、勉強目的で利用するのは難しいと思います。字幕なしで映画を見るとか、ハリーポッターを原書で読むとか、英語に関する憧れはいくつか浮かぶかもしれませんが、どれも基礎なくしては到達できない領域です。

どの世界にも言えることでしょうが、やはり第一人者ほど基本を大事にしていると思います。英語で言えば、これまで何名かの同時通訳者の著書を読んだことがありますが、どの方も「単語を覚える、シャドーイングをする」といった基礎を欠かさずに続けていました。

白鵬も、実戦形式の稽古に入る前には、1時間以上かけて基礎運動をします。
これはケガをしないためでもありますし、強くなるためでもあります。
トップになっても基本を大事にする姿勢は、きっと白鵬の軸なのでしょうね。
軸がしっかりしていれば、ぶれずに毎日を送ることができるのだろうと思いました。

僕も「単語を覚えることと音読すること」には、毎日1時間以上かけています。
白鵬のようなお手本がいるからこそ、迷わずに続けることができています。

 

3. 型を持つ

日本の芸事には「型」があり、これはスポーツ要素のある相撲でも同じです。
白鵬は「右差し・左上手」という、相撲を取るときの自分の「型」を持っています。
その「型」に持ち込めれば、まず負けないという得意な形のことです。

また、日本の芸能には「守破離」という教えがあります。
「守の時代」にしっかりと自分の「型」を身につけることで、「破の時代」それから「離の時代」へとつながっていきます。「型」があるからこそ、進化していけるわけです。

型がないのに、いろいろやっちゃダメ。これは、人生にもあてはまっていくと思うね。いろんな人の人生にも、これ、必要だと思うね。

白鵬は、相撲を取るときの「型」以外でも、あらゆる場面で自分の「型」を作るそうです。
別の言葉にすると、「ルーティン」と呼ばれるものですね。
日常の流れ、取組に向かうまでの流れ、寝てから起きるまでの流れ、そのすべてに心を配って、勝つための流れを切らしません。
前述の「右差し、左上手」が「体の型」であるならば、日常の流れを作ることは「心の型」になります。
「体の型」と「心の型」があってこそ、白鵬という強い横綱が成立します。

心と体を一致させることが大事です。心に余裕があるから、そういうことができて、やっと横綱らしくなるんですね。余裕の裏付け? 自信だよね。誰よりも稽古したと言える自信ありますね。稽古が大事なのはそこなんですね。下の力士は、その自信がない、自分にちょっとモヤモヤがあるからこそ、ここで勝負だと思ったときに負けることがある

僕は、英語においても「型」があると思っています。
自分にしっくり来る「型」というのが人それぞれにあって、その「型」になったら英語がスラスラと出てくるという種類のものです。

相撲では「型」は1つあれば十分ですが、英語では手持ちの「型」が多ければ多いほど表現できる幅が増えていくので、自分の型を増やしていくことが、日々の稽古での目標になります。これは「体の型」のほうですね。英語学習は、総じてフィジカル要素が強いです。

一方、「心の型」ですが、これは毎日学習を続けていくためのルーティンです。
1日のうち、どこで勉強時間を取るかが決まっている英語学習者は多いと思います。
決まっていないのであれば、意識して作ったほうがいいでしょう。
毎日続けるには、決まった時間に英語に向かうようにすることが非常に大切なのですが、その時間を作り出すための流れを生み出すことも同じくらい重要です。
「心の型」ができてくれば、自然と英語学習に体が向かいます。
「勉強しようという気持ち」と同じくらい「勉強に向かうための流れを作ること」は大事なのだと思います。

「型」を作って、「型」を守っていくことが、英語学習の基本になるのかもしれませんね。

 

4. 運を呼び込む

白鵬の好きな言葉の1つに「運」があります。
今でこそ192センチの巨人のような横綱ですが、初めて日本に来たときは、175センチ62キロという普通の少年でした。
一緒に日本に来たモンゴル人たちが次々と相撲部屋にスカウトされていくなか、白鵬を選ぶ部屋はなく、そのままモンゴルに帰ることが決まりました。
どうしても力士になりたかったわけではなく、ただ親にわがままを言って日本に来たかっただけなので、ふつうにお土産を買って、帰国する準備をしていたそうです。
しかし帰国前夜、いろいろな人が白鵬少年の運命にタッチし、宮城野部屋へとスカウトされることとなり、そのまま力士としての人生が始まったのでした。
もしそのまま帰国していたら、横綱白鵬は生まれていなかったのですから、白鵬が「見えない力が絶対にある」と言うのも納得です。

しかし、ちゃんと努力をしないと、見えない力を味方にすることはできないとも言います。

例えば、相撲だけで言ったら、みんな同じことやってます。毎朝、土俵におりて、四股踏んで、稽古して。みんな同じですよ。相撲だけじゃなくて、一年三百六十五日、いろんな事に挑戦して、努力することで、神様が運を与えてくれたんじゃないかと思いますね。運というのは、たくさん努力をした人間にしか、来ないと思います。たくさんの努力が、運を寄せ付けるんじゃないかと

僕は英語講師として生徒さんを指導しているのですが、TOEICのようなテストで目標を達成できるかどうかは、運も関係していると思っています。

読みやすい問題だったとか、ちょうど勉強したところが出たとか、いい環境の会場だったとか、そういう自分ではどうすることもできないポイントが、自分に有利なように作用してくれることは絶対にあると思います。

それからTOEICで言えば、あれほど自分の手ごたえが当てにならないテストも珍しいでしょう。「できた!」と思ったのに、スコアを見たら下がっていたこともあれば、「全然ダメ」と思ったのに目標を達成できたとか、そういう例をいくつも見てきました。
自分自身の経験としても、もちろんあります。

テストに向けてしっかりと努力して、テスト中に挫けそうになっても最後まで諦めずにベストを尽くすことで、運が寄ってきてくれるかもしれないのです。

なかなか結果が出なくて苦しい時期があっても、努力を続けていれば、いつかは運が味方してくれるのでしょう。生徒さんの中にもそんな方々がいらっしゃったので、余計にそう思います。

 

5. おわりに

英語学習者として『白鵬伝』を読みましたが、1つのことを追究している人の言葉と生き方には、学ぶべきところがたくさんありました。

きっと目標を達成するために必要な共通項というものが、どの分野であれ、確実に存在するのだと思います。そうでなれけば、『白鵬伝』からこれほど感銘を受けることもなかったでしょう。ひたむきな人の言葉と姿勢には、心を揺さぶるパワーがあります。

本の序盤で、白鵬が「なぜ相撲を取るのか」について触れているところがあったので、それを最後に紹介しようと思います。

人間て、不思議だよね。こんなに自分を苦しめてさぁ。相撲って何のためだと言って、じゃあ、何のために闘ってる、頑張ってるんですかって言われたら、『自分の強さ、弱さを知るため』だと思いましたね。自分自身の真の心を知るために、やってる。一番の財産は、勝ち負けじゃなくて、『真の自分を知ることじゃないか』と、つくづく思いますね

何のためにやるのか?
頭で考えても答えがすぐに出るものではありません。
一生懸命に取り組んで、ある日突然、「あ、そうだったんだ」とひらめくものなのでしょうか。白鵬の言葉から推測すると、そんな気もします。


白鵬の土俵入りです。
身につけているものは、22キロあるそうです。
横綱だけに許される白い綱だけで14キロですから、驚きです。
(この土俵入りは、僕の実家のすぐ近くで行われました)

記事では白鵬のセリフに絞って引用をしてきましたが、ほかにも印象深い言葉がたくさんありましたし、著者の言葉にも核心を突くものがあって、全体を通して楽しく読める本でした。

せっかくの人生ですから、目標を掲げながら前進していけたら良いですよね。
『白鵬伝』は、そんな気持ちにさせてくれます。

それではご覧いただき、ありがとうございました。