1.結論としては「う~ん」な1冊
ご覧いただき、ありがとうございます。
マンツーマンTOEIC対策のリノキア英語スクールです。
今回ご紹介するのは『公式TOEIC Listening & Reading プラクティス リーディング編』です。
2020年8月に発売された「公式」テキストです。
兼ねてからレビューを書こうと思いつつ、なぜか他の本よりも後回しになってしまっていたのですが、ようやっと1冊最後まで使い切るに至りました。
そして感想としては、「う~ん、微妙」です。ちょっと何がしたいのか分からなくて、目的が明確でないと感じるテキストでした。
もちろん良い点もありましたので、そこはきちんとお伝えしていきますが、この記事の目的としては、テキストの帯にあるような宣伝文句に騙されてはいけないという警鐘を鳴らすことにあります。
残念だった点もハッキリと書いてしまうため、この本を使おうかどうか迷っている方にはマイナスに作用してしまうかもしれません。この記事で書かれていることは、あくまで筆写の主観によるものですから、実際に使用してみたら、まったく違った感じ方をすることも十分にあり得ます。ですので、この記事を100%信用することなく、最後はご自身のフィーリングを頼りにして、使用するかどうかを決めていただけると良いかと思います。
2.いったいどこが微妙なのか?
それでは早速、『公式TOEIC プラクティス リーディング編』が残念な点について挙げていきたいと思います。
2-1.どこを目指しているのかが分からない
TOEICのテキストには、それぞれ役割があります。
・語彙力を強化するための単語集。
・文法力を強化するための問題集。
・読解練習を積むための問題集。
・そして総合的な練習をするための模試。
模試を除けば、たいていのテキストは単語・文法・読解のどれかに焦点を当てています。ゴールが設定されているので、自分の目標に応じて選ぶことができるのです。多くの人は「苦手」を潰すためにテキスト購入を検討するのではないでしょうか。
しかしながら『公式プラクティス リーディング編』は、このテキストを使い終えた先にどんな成果があるのか、それが分かりにくいのです。
いちおう本書の帯はこのようになっています。
どうでしょう? けっこう魅力的だなと思いませんか?
これを使えば、それまで抱えていたリーディングの悩みが解消されるかもしれないという期待を抱かせますよね。「こんな方におすすめ!」とありますが、まさにリーディングで悩んでいる人の不安をズバリ突いていると思います。
ただし、この帯に書いてあることは極めて表面的です。テキストを最後まで使った身として言わせてもらえば、中身の無さを隠すために敢えてキャッチ―な宣伝文を使ったのではないかと疑わざるを得ません。
まず気になったのは対象レベルです。「TOEIC L&Rスコア 350点~700点レベル」という設定は広すぎます。350点の人にピッタリなテキストは、700点の人には簡単すぎますし、その逆も然りです。そのあたりのスコア帯に属している人が多いからという理由で、安易に「350点~700点」という範囲にしているとしか思えません。
それから現状のスコアではなく、目標スコアを(例えば「600~730点を目指す方にオススメ」みたいに)書いてくれれば、使用者側もゴールが見えやすくなると思います。
2-2.文法解説がレベル高め&無味乾燥
このテキストのメイン部分は20個のユニットで構成されており、各ユニットの最初には文法解説だったり問題の解き方だったりが紹介されています。
しかしながらレベルがけっこう高く、文法解説に関しては「初心者が読んでも分からないんじゃ?」と思ってしまうところが多かったり、解法に関しては「高得点者でもそんな風にできる人は少ないんじゃ?」と首をかしげてしまうようなものが散見しました。
とくに文法解説は、最初からSVOCがある程度分かっている人向けの書き方になっているので、これから英語をやり直そうと思っている人や苦手意識のある人だと、1人で進めるのには覚悟が要ります。
300~400点台の方にとっては、解説を読んでも「??」となる可能性が高いのですが、その一番の原因が、お役所的な言葉遣い、言い換えれば無味乾燥な説明なのです。解説を読んでみれば分かるかもしれませんが、「ザ・解説」という感じがします。すでに文法を理解している人なら読み進められるでしょう。でも、これから英語を頑張るぞ! という意気込みを持った方にとっては、あまりワクワクしないものだと思います。
やはり、初学者にとっては、平易で分かりやすい解説が何よりの助けです。
続いて長文読解で紹介されているポイントです。読解のコツとして、以下のような点を意識することが推奨されています。
1.文書形式を把握する
2.発信者と受信者の関係を推測する
3.概要(主題や目的)を捉える
4.詳細情報を理解する
これは確かにその通りだと思います。いかにも教科書的な感じですね。
ハードルが高いと感じたのは、これらを一気に紹介してしまっている点です。まだ英文を読みなれていない段階なのに、たくさんのポイントを意識するように言われてしまうと、処理しないといけない情報が増えすぎてパニックに陥ります。
ご自分でやる場合には、その日ごとに注力するポイントを決めて、1つずつ意識できるように変えていくのが良いのではないかと思っています。
2-3.練習問題の目標解答時間がテキトー & 余計なことをしている
ユニットは3部構成になっており、ウォームアップ → プラクティス → チャレンジ と進んでいきます。
最後のチャレンジでTOEICと同じように解くことになっており、目訳の解答時間も設定されているのですが、それがけっこうテキトーなんですよね。
パート5、6のチャレンジ問題はすべて6問で、解答時間は2分30秒となっています。これは妥当だと思いますが、対象レベルを広く設定しているので、目標スコアに応じたタイムを提示したほうが良いと思いました。
一方、パート7の目標タイムは非常にシビアです。シングルパッセージは一律3分30秒と設定されており、ダブルパッセージは5分、トリプルパッセージは6分と長くなっていますが、TOEIC400~500点の方だと目標タイム内で解くことができる人は少ないと思います。
ただ、もっとも不満だったのが、シングルパッセージの目標タイムが問題数に関係なく3分30秒に設定されていることです。
文書の長さや設問数が異なれば、必要タイムも変わってくるはずなのに「3分30秒」で統一なんですよね。このあたりがテキトーだなと感じるわけです。TOEICにきちんと取り組んだことのない人たちが何となくで作っているような感じがして、テキストに対する信頼が損なわれました。
「公式」とつければ売れるとでも思っているのでしょうか。
Unit19と20では「スキミング」や「スキャニング」といったカッコイイ読解法が紹介されていますけれども、要は「ななめ読み」でしかなく、そんなことをTOEIC350~700点の人たちが実践したら、正しく読む習慣が身につかないまま終わってしまいます。
本当に余計なことなので、真似しないでください。理解が浅いまま速く読めたつもりになるのは危険です。
『公式TOEIC プラクティス リーディング編』は総じてテキストとしての軸がなく、見た目はいいけれども内容はスカスカで、何がしたいのか分からないことになっています。
3.良いところはあるの?
しかし、どんなテキストにも良いところは必ずあります。これまで散々に酷評してきたこの『公式プラクティス リーディング編』だって同じです。
ここからはテキストのグッドな点について紹介していきます。
3-1.収録問題数が多い!
このテキスト1冊に「318問」の問題が収録されています。リーディング特化の模試に比べたら全然少ないですけれども、総合テキストとしては多いほうかなと。
問題パターンはひと通り網羅していますので、練習素材として使えますね!
そんなところでしょうか。
……あれ? 終わり? まだ1つしか紹介されていないけど???
はい。これだけです。公式教材であることと、問題数がそこそこあることが、このテキストの強みだと思います(面接だったら完全に落とされるアピール)。
TOEICの公式問題集を3~4冊しっかり終わらせ、それでもまだ公式問題が解きたいという飽くなき欲望を持つ方にはオススメできますが、帯にあるような「TOEIC350点~700点」の方は、ほかを当たったほうがよいでしょう。
4.まとめ
オススメ度:★★☆☆☆(やめといたほうがいいかも)
TOEICの問題研究が目的だったり、公式問題を1つでも多く解きたいという方には合うかもしれませんが、そうでない限りは使わないほうが良さそうです。
肯定的に表現すれば「器用貧乏」な本ですが、正直言って見かけ倒しです。
文法を伸ばしたいなら文法特化のテキスト、たくさん解きたいならリーディング模試、のように目的に合ったものを1冊ずつ用意するほうが良いと思います。
冊数は多くなってしまいますが、イマイチな何でも屋を雇うよりも、各分野のプロを雇ったほうが最終的には満足できることでしょう。
これまで何個もレビュー記事を書いてきましたが、ここまで否定的な内容になったのは初めてです。でも、「公式教材」という立派なイスに座ってふんぞり返っているようなテキストだったので、せっかく作るなら「公式」に見合ったものを出してほしいという思いも込めて書きました。
今回の記事が、みなさんのテキスト選びの参考になれば幸いです。
それでは最後までご覧いただき、ありがとうございました。